喫茶の風習は元々中国の唐代から宋代にかけて発展したものです。8世紀頃、中国の陸羽が著した『茶経』(ちゃきょう)には茶の効能や用法が詳しく記されていますが、これは固形茶を粉末にして鍑(現在の茶釜の祖先)で煎じる団茶法でした。
抹茶(中国喫茶史では点茶法(てんちゃほう)と呼んでいる)の発生は、10世紀と考えられています。文献記録は宋時代に集中しており、蔡襄の『茶録』(1064)と徽宗の『大観茶論』(12世紀)などが有名ですが、これらの文献では龍鳳団茶に代表される高級な団茶を茶碾で粉末にしたものを用いており、団茶から抹茶が発生した経緯をよく表しています。この抹茶を入れた碗に湯瓶から湯を注ぎ、茶筅で練るのが宋時代の点茶法であり、京都の建仁寺、鎌倉の円覚寺の四つ頭茶会はこの遺風を伝えています。
日本には平安時代初期に唐から喫茶法(おそらく団茶法)が伝えられましたが、抹茶法が伝わったのは鎌倉時代とされています。その伝来としては、臨済宗の開祖となる栄西禅師が1191年中国から帰国の折に茶種と作法を持ち帰り、その飲み方などが日本に広まったという説が有名です。
栄西の『喫茶養生記』には茶の種類や抹茶の製法、身体を壮健にする喫茶の効用が説かれています。1214年(建保2年)には源実朝に「茶徳を誉むる所の書」を献上したといいます。この時代の抹茶は、現在のような、緑色ではなく茶色でした。